短編集短編 力持ちの河童の子

とある小川のほとりに、力持ちの河童の娘がおりました。
彼女は、ある日、人間の村落の側を通ります。そこで、広場で遊んでいる人間の子どもたちを見かけました。
彼女は、とても楽しそうだと思いました。それでしばらく、子どもたちを木陰にこっそり眺めていたのです。
しかしやがて、遊んでいた一人の男の子に彼女は気づかれてしまいます。
「河童がいるぞ!」
子どもたちは、妖怪を見かけたらすぐに逃げるか、追い払うようにと大人たちに言われていたので、何人もの子どもたちが彼女を石を投げつけ、追い払います。
彼女は逃げ帰ることしかできませんでした。娘の心は悲しみでいっぱいです。
河童の娘は、住処の河原で、楽しそうにしていた子どもたちのことを思い返しながら、ため息をつきました。
それから数日たった別の日のことです。その日は強い嵐の日でした。
河童の娘の住処である小川はかさを増し、勢いを激しいものにしています。それを見て、彼女はふと村落で遊ぶ子どもたちのことが心配になりました。
彼女が村の広場を見に行くと、一人の女の子が倒れた木の下敷きになっています。その子は必死に抜け出そうともがき、そして他の子どもたちも力を合わせて木を持ち上げようとします。しかし、いくら頑張っても木は持ち上がりません。
いてもたってもいられなくなった河童の娘は、隠れていた木の陰から広場へ弾かれるようにして飛び出します。倒れた木に駆け寄り、持ち前の怪力を活かして木の下敷きになっていた女の子を助け出しました。
河童の娘は女の子に手を差し伸べましたが、他の子どもがすぐに女の子を連れて逃げ出してしまいます。
彼女はしばらくそこで佇んで、ぬかるんだ地面を見つめながら雨風に吹かれていました。
また別の日のことです。今日は先日の嵐が嘘のように晴れ渡っていました。
彼女はまた、村落に出向きます。久しぶりに子どもたちが広場で遊んでいるのを見かけて、いつかのように木陰に潜んで子どもたちが楽しそうにしているところを眺めていました。
そしてまたいつかのように、彼女は子どもに気づかれてしまいます。目が合ったのは、あのとき初めに声を上げて石を投げつけてきた男の子です。顔を木の影から覗かせていると、男の子はしばらく黙ってこちらを見ていました。
しかしやがてこちらに歩み寄ってきて、手を差し伸べてくれたのです。彼女は喜んで広場に出ていって、子どもたちと仲良く遊びました。
めでたしめでたし。